ワーキングメモリと学力の関係
授業を真面目に受けて宿題やテスト勉強をしっかりしていれば、たいていは勉強ができるようになります。
もし、公立小学校のテストで平均点がとれないのだとしたら、
ー授業態度がよろしくない
ー宿題をサボる
ー復習をしていない
ーテスト範囲の勉強をしない
などの理由があるはずです。
こういった場合は、「まじめに勉強する」ことで成績も上がります。
一方、子どもは(程度の差こそあれ)それなりに努力をしているし、親も子どもの勉強に目と手をかけている。
それでも、頑張りに見合うだけの結果を得られないこともあります。
宿題も復習もするし、テスト前には親が勉強に付き添ったとしても、平均点がとれない場合です。
ー範囲のあるテストの勉強をしたのに、答えが的外れ
ー耳で聞く質問に対する答えがズレることが多い
ー授業中の不規則発言を頻繁に注意される
ー授業態度は注意されないが、理解度を心配される
ー多人数に向けた口頭の指示を聞き逃しがち
ー周囲の物音や人の声に反応して、集中が途切れる
以上のような困りごとが恒常的に見られる場合は、ワーキングメモリの弱さが考えられます。
本人には悪気がないので、なんど注意されても、きつく叱られても、同じことをしてしまいます。
国語教室ミルンでは、論理力と読解力を学びます。
学んだ分だけ着実に身につけていけば、国語力は伸びていきます。
でも、そもそも授業に集中できない、説明を聞いても理解できないなど、学ぶこと全般が難しい場合は、なかなか国語力は伸びません。
(まったく伸びないというわけではなく、できるようになったと実感するのに、ふつうの2〜3倍の時間がかかります)
こちらは教室のオンライン説明会でご覧いただく国語力ピラミッドですが、国語だけではなく勉強全体についても同じことが言えます。
学力を下支えする理解力にはワーキングメモリが関与しています。
たとえば新しい単元を習ったときに、一度説明を聞いただけで理解する子もいれば、何度聞いてもよくわからないという子もいます。
解説を聞いたり教科書を読んだりが苦手で、理解力が低いということです。
ワーキングメモリが弱いと集中力も継続しにくく、言葉による説明も理解しづらくなります。
ワーキングメモリは読解力にも深く関与しています。
暗記力にも関係があります。
叱責は禁物
60~90分の間ずっと集中し続けるなんてことは不可能です。
どんなに勉強の得意なまじめな子でも、あくびをすることもあるし、疲れた様子を見せることもあります。
でも、授業の半分以上の時間、ぼんやりしたりよそごとを考えたりしているのであれば、それはなんとかしなければ。
ワーキングメモリは研究途上の分野です。
生まれつき決まっているものの、訓練で強化することができるとも言われています。
一方、トレーニングの効果は限定的という説もあります。
わたしは研究者ではないので詳しく解説することはできませんし、本や論文を探しては読み、経験で知り得たことを重ね合わせて推論を導き出すことしかできません。
でも、「聞くことと集中することが苦手」で学習に困難を抱える子どもが少なからずいるということはわかっています。
そして一番困っているのは子どもたち自身だということも。
集中力が散漫だと、今読んでいる箇所や解いている問題がわからなくなり、理解も浅くなってしまいます。
聞き逃すことが多いほど、理解できない範囲も大きくなり、学習面での負債が大きくなっていきます。
なんとか彼らの注意を喚起し、少しでも文章を読めるようになってもらいたいと思って指導を続けています。
通い始めた当初は授業に集中できなかったけれど、2年3年と通ってくれるうちに、見違えるほど成長した子どもたちを何人も見てきました。
たとえ一度聞いただけでは理解できなかったとしても、翌年も同じレベルのクラスで同じ教材を学ぶことでわかるようになる子もいます。
ワーキングメモリが関係していたかもしれないし、成長がゆっくりなだけだったのかもしれません。
「読み聞かせをし、問いを投げかけ、考えて発言してもらう」ことを繰り返す授業自体が、ワーキングメモリを強化しているのかもしれません。
注意されてすぐに授業に意識を戻せるなら、その子に対する注意は有効だということです。
でも集中力が途切れがちな特性がある場合は、その度に注意していると本人も注意する側も疲れてしまいます。
おそらくは、自分でもついうっかりぼんやりしてしまうのです。
それを指摘されるとイライラしたりパニックになったりして、さらに集中できなくなる子もいます。
強い叱責は禁物です。
さりげなく今読んでいる個所や解いている問題を指し示す方が、集中力を戻しやすいと思います。
教室でも、一緒に授業に参加して声掛けしてくださる保護者のみなさんのサポートが大きな助けとなっており、とてもありがたいです。
おうちで勉強するときにも、集中力が続かなかったとしても、否定的な言葉は投げないでください。
いくら教えても子どもが理解しなかった場合、腹が立つのもわかります。
でも、その教え方を押しつけることはあきらめましょう。
それは単に子どもの特性と教え方の相性が悪いだけで、どちらかが悪いわけではないのです。
叱ったり嫌味を言ったりしてやる気になる子どもはいません。
勉強時間を10分ずつ区切る、休憩しながらやるなど、その子に合った勉強法を見つけましょう。
責めたり嘆いたりする暇があったら、子どもが理解できるような教え方(あるいは塾や家庭教師)を探すべきなのです。
そしてこの考え方は、国語の苦手度合いに関係なく、どんな子どもにもあてはまります。
自分に合う勉強の仕方で学べば、誰でも成長できるはず。
その子にとっての適切な支援は何なのかを考えましょう。
予習もおすすめ
「初めて読む文章の意味がわからない」ということが頻繁に起こると、授業中に疎外感を覚え始めます。
そうなるとますます集中力を欠き、苦手意識が強くなるので、まずは「読んでわかる」状態までもっていくことを優先すべきです。
そのためには、学校や塾の教科書を前の日に読んでおくのは一案です。
一度読んだことのある内容であれば理解も進むはず。
わからない
⇩
つまらない
⇩
集中できない
⇩
苦手
という負の連鎖を断ち切り、
家で読む
⇩
授業がわかる
⇩
集中できる
⇩
達成感がある
⇩
また家で読む
というループを作れたら、少なくとも授業がまったく理解できないという状態からは抜けられると思います。
通常、勉強するとき、多くの学生は本、教科書、参考書などを『読む』事で学習しますが、この作業で主に使用する経路が言語性ワーキングメモリーです。このため、この経路の障害はすべての教科の学習の障害となりやすいです。
子供のワーキングメモリーの分布に応じた方略を使って長期記憶に入れやすくしてあげる事こそが教育であり、そのためにも発達障害児のワーキングメモリーアセスメントが重要であるというのです。
教育とは、無知な子供に、知識を植え付ける事だとすれば、それは、すでにある知識(結晶性知能)など不要で、その子供の学ぶ力(ワーキングメモリー)こそが鍵となる。
(本文より引用)
支援の目的と方法、評価についてわかりやすくまとめてあります。
ワーキングメモリを鍛える問題集が購入できるようです。
【児童・生徒のワーキングメモリと学習支援】参考記事
ワーキングメモリは,国語,算数(数学),理科などの学習と密接に関連していること,そして,発達障害のある子どもの多くがワーキングメモリに問題を抱えていることが明らかになっています。(本文より引用)
文や短い文章を理解することが可能でも、文章の構造に即して理解することが難しい子どもがいます。文章には構造があります。
長い文章を読みとる時には、文章構造を意識しながら、読んでいきます。ワーキングメモリの弱さが、読解の困難にも関係します。(本文より引用)
国語教室ミルンでも、文章構造を意識するべく論理を学んでから読解を学びます。また、最初は一文の理解から始め、徐々に長文へと進めています
【「心の集中」に大切な短期記憶:容量をアップするには】参考記事
他のことは一切忘れて、目の前のタスクに集中したいのに、雑念が頭の中に浮かび続けるのはどうしてなのでしょうか。
ある研究は、人間1人のワーキングメモリの容量と、情報のコントロール力(周囲から入ってくる刺激や雑音を、重視するか無視するかを選択できる能力)との間には、密接なつながりがあることを示しています。別の言い方をすれば、ワーキングメモリの容量が大きければ大きいほど、周囲からの雑音をはねのけて目の前のタスクに集中できる能力も高いわけです。
ワーキングメモリは、将来的な学力達成度を示す指標としてはIQ(知能指数)よりも優れていることが証明されています。
ワーキングメモリの容量が小さい子どもたちの98%は、読解力と数学の標準テストできわめて低い成績をおさめたというのです。(本文より引用)
【低下したワーキングメモリ(脳のメモ帳)の機能は強化できるのか?】参考記事
ワーキングメモリの点数が低い人は決して覚えるのが苦手なのではない。「注意の移動」が苦手だということ。
覚えなくていい対象に注意が向けられていたりして、覚えるべき対象に正しく注意が向けられていないようだ。(本文より引用)